尿失禁について

尿失禁とは、自分の意志とは関係なく、尿が体外に漏れてしまう症状を指します。大きく下に示す五つに分類されます。

  • 腹圧性尿失禁
    咳やくしゃみをしたり、お腹に力を入れた時にもれる
  • 切迫性尿失禁
    尿意を我慢できないでもれる
  • 混合性尿失禁
    上の二つが混在した状態
  • 溢流性尿失禁
    排尿障害のために、尿があふれ出てしまう
  • 機能性尿失禁
    尿路に異常はないが、他に原因でもらす

腹圧性尿失禁は、主に成人女性にみられるもので、年齢とともに症状に悩む人の割合が高くなります。切迫性尿失禁の大きな原因は過活動膀胱という病気です。女性の場合、この両者が合併し、混合性尿失禁という程度の強い尿漏れをきたすことも珍しくありません。溢流性尿失禁は尿が出ずらい病気が背景にある場合にみられ、高齢の男性に多いものです。大きな原因としては前立腺肥大症が挙げられます。機能性尿失禁は膀胱尿道の働きが正常なのに、おもらししてしまうことです。例えば、認知症などが原因でトイレ以外で排尿してしまう場合がここに含まれます。


尿失禁の原因となる代表的な二つの病気について少し詳しくお話いたします。

腹圧性尿失禁

くしゃみや咳をした時、運動時など腹圧がかかった時に尿が漏れるものを腹圧性尿失禁と呼び、症状名が病名となっているものです。女性のおもらしの原因として非常に多くみられるものです。

尿失禁は成人女性の4人に一人にみられ、その重症度は年齢とともに高まるといわれています。日本で40歳以上の女性を調査した結果では、44%が尿失禁を経験しています。

腹圧性尿失禁は妊娠出産、肥満やホルモン環境の変化、子宮の摘出などの婦人科的手術との因果関係が指摘されており、骨盤底筋という骨盤の底の支持組織のうち膀胱の出口や尿道を支える部分が弱くなるために起こります。

治療は、軽症であれば骨盤底筋訓練という一種の筋トレプログラムを気長に行うことで結構効果があります。

尿道の筋力を高める新薬も開発されつつありますが、今のところ特効薬はなく、効果は限られています。尿漏れが多い場合は手術が最も有効です。最も世界的に普及しているのはTVT手術とTOT手術といわれるもので、特殊なテープで尿道を支える約30分程度の安全な手術です。効果も確実で、長期にわたって安定しています。当院では早くからこれらの手術を行ってきており、治療成績は非常に良好です。

過活動膀胱

尿意切迫感(ふいに尿がしたくなって我慢するのがとてもつらい症状)や頻尿(尿が近いこと)を主な症状とする病気です。尿意を我慢できずおもらしをしてしまう切迫性尿失禁の大きな原因です。尿をためている時に膀胱が勝手に収縮してしまう異常や、膀胱の感覚に関係する神経が何らかの原因で異常に高ぶって強い尿意を繰り返し生ずることなどが原因と考えられています。

40歳以上の日本人の12.4%(800万人以上)が過活動膀胱を有するといわれています。

尿失禁を伴うものと伴わないものがありますが、女性に多いものは尿失禁を伴うもので、高齢者になればなるほど、増えてゆきます。一日の排尿回数が8回以上、尿意切迫感が週1回以上あれば、過活動膀胱と診断されます。


主な治療は抗コリン剤やベータ作動薬という内服薬で、8割以上の方に効果があります。

検査はほとんどの場合、必要ありませんし、過活動膀胱についての治療は進歩が著しく、重症例でもかなりの方が救済されるようになってきています。心配な方やお困りの方は、気軽に泌尿器科を受診されることをお勧めします。

尿失禁に対する新しい治療法(PDF)

尿失禁に対する新しい治療法

「ボツリヌス療法」について(PDF)

尿失禁・女性泌尿器科専門外来について

北海道泌尿器科記念病院では、毎週火曜日の午後に尿失禁・女性泌尿器科外来を開いております。女性の方のみを診療しているものではなく、男性で尿失禁に悩んでいらっしゃる方も受診していただくことが出来ます。恥ずかしいという理由で、受診や通院をためらわれる患者様が多くみられますが、症状の原因となる病気をしっかり調べれば、良くなるものが大部分です。

ご自身の快適な生活のためにも、悩まずにぜひ一度当院へお越しください。